あなたの食卓の少し向こう側に立つワタシ――スーパーの現場から見つめる食と農

私は時折、副業(スキマバイト)としてスーパーの惣菜加工場や生鮮食品売り場で働くことがある。 そこで食品の調理やパック詰め、袋詰めをしながら、職場の雰囲気や入荷される野菜の出来栄えをつぶさに観察するのが密かな楽しみだ。

今年の9月は長雨の影響で野菜、とりわけ葉物類が不作となり、レタス一玉が400〜500円近くまで跳ね上がることもあった。一方で比較的安定していたのはジャガイモなどの根菜類だ。こちらは秋物の本格的な収穫がこれからという時期であり、農家さんがすでに確保していたストック分を順次出荷していることも安定の要因だろう。逆に雨が多いということは、里芋の収穫量はかなり見込めるのではないか……などと期待も膨らむ。

「たかだかスーパーのアルバイトに過ぎないのに、なぜ農家の実情まで語れるのか?」と思われるかもしれない。 それは、私が普段から多摩地区をはじめ東京都内各地の農家さんの作業をお手伝いしている(援農ボランティアに参加している)からだ。

よろしければ、こちらも参考にされたい。

【①-1 援農ボランティア日記】まえがき 【①-2 援農日記】見るとやるとでは大違い、でも終わった後、充足感が満ちていた

今の時期なら、夏野菜(トマトやナスなど)の株の片付け、秋冬野菜の芽かき、雑草取り、追肥といった作業を農家さんと共に行っている。このあたりの現場の詳細は、また別の連載記事で詳しく紹介したい。

また、チーフからの依頼があれば店頭に出て品出しや棚作りも行うため、ミクロレベルでの消費動向をダイレクトに目にする機会もある。買い物をされているお客様が商品のどこを気にされているのか、ご家族同士や店員との会話にそっと耳を傾けながら情報収集をする。これもまた実に楽しい時間だ。

ある時には、ゴミの回収作業のついでにバックヤードでの商品の「着荷状況」を目にすることもある。 着荷対応は、店舗に商品を受け入れる重要プロセスであり、青果や精肉などの責任者が直々にあたることが多い。搬入口から狭く限られたバックヤードのスペースへ、マテハン器具(運搬機器)を巧みに扱いながら迅速かつ効率的に仕分け・収納していく様は、まさに壮観の一言だ。

私の本業はITエンジニアである。仕事の単位も短くて週単位、長ければ年度をまたぐプロジェクトになるため、物事を考える時間軸も比較的長いスパンになりやすい。 これに対してスーパーは完全な「日銭商売」であり、1日の限られた時間帯の中で即時的な行動が必須となる。せっかく出来上がった惣菜パンも、夕方14時に並べたのでは求めている客層と噛み合わず「夏炉冬扇」になりかねない。必要な商品を、必要な時間帯に届けるため、従業員が分刻みのスケジュールに自分を合わせていく職場なのだ。

さらに、薄利多売のビジネス構造ゆえに、店長や各部門(青果、惣菜、ベーカリー等)の責任者には微に入り細に入り徹底した経費管理が課せられる。それゆえに、大企業の事務職の方が想像する以上に労務管理も厳密だ。 単純作業が多いからこそ「根性や気合」だけでは到底乗り切れないことを現場の誰もが熟知している。だからこそ繁忙期などには、私のような臨時職員(スキマバイト)を効果的に活用する仕組みが整っているのだ。

さて、こうしたバックヤードでの体験は、仕事を上がって「一消費者」に戻る時にも大いに生かされる。

現在、そして近未来の野菜の市況を見据えながら買い物を楽しむ。その上で、「この店舗構造なら、葉物・果物・根菜・きのこ類の配置はここが最適か?」などと勝手に店内のVMD(陳列設計)を診断してみる。店舗の動線計画から客の動きを想像し、自らをモニターとして客体化しながら買い物をする時間は、楽しくてたまらない。さながら、子供が遊園地のアトラクションに駆け込むような高揚感がある。

スーパーでのアルバイトは、私にとって趣味と実益、そして学びを兼ねた非常に貴重な時間なのだ。

同じように、冷凍倉庫作業でのバイト体験や流通の裏側についても、またの機会にお話しできればと思う。